日本史上最大の英雄・徳川家康を祀る神社
紅葉のシーズンには大勢の観光客で賑わう日光。そのもっとも著名な観光スポットが「日光東照宮」(以下:東照宮)です。
豪華絢爛な建築美を、観光ガイドなどで目にしたことがある方も多いでしょう。東照宮は、日本史上最大の英雄の1人である徳川家康の墓所であり、日本の歴史・文化が形作られるなかで、非常に大きな役割を果たしてきました。
本記事では、東照宮にまつわる歴史・見どころをご紹介します。あなたの東照宮観光が、より充実したものになること間違いなし!
徳川家康って?
徳川家康(1543年〜1616年)は、当時100年以上に渡って続いていた戦乱の時代を、武力によって終わらせた英雄です。
1603年には武士の棟梁である征夷大将軍に任ぜられ、その後200年以上続く政権・江戸幕府を創始。浮世絵、寿司など海外でもよく知られている日本文化は、この時代に誕生しました。
現在の東京の繁栄も、彼が江戸(えど:東京の旧称)に本拠地を置いたことに始まっています。
東照宮の由緒と名前の由来
東照宮は家康の墓所であり、彼を神として祀る神社。東照宮とは、「東から照らす神社」という意味です。家康は死後に神となり、日本列島の東側から全国を照らし、守護しているのです。
家康の死後、息子の秀忠(ひでただ)によって創建されました。当時は現在とは違う、もっとシンプルな施設だったそうです。
その後、家康を厚く尊敬していた孫の家光により、1634年〜1636年のおよそ2年間をかけて、現在の豪華絢爛な社殿が再建されました。
以来現在まで、日本人にとっての重要な宗教施設として、大切にされて来ました。
その優れた建築群、長い歴史が形作った神聖な宗教的空間、現在まで受け継がれている日本独特の信仰の姿が評価され、1999年にはユネスコの世界遺産にも認められています。
参拝ルート紹介
入り口から家康が眠る奥宮まで、ほぼ1本道で回ることができます。ここからは一般的な参拝ルートに従って東照宮の見所を紹介します。
1. 石鳥居
東照宮の入り口を示すのが、この石鳥居です。鳥居は通常日本の神社に設けられ、聖域の入り口を表しています。
鳥居に近づいてみると、何やら文字が刻まれています。ここには、現在の福岡県を治めた大名・黒田長政(くろだ ながまさ)が、自身の領地から日光まで石を奉納したことが記録されています。
福岡から日光までは、直線距離でも900キロメートル以上。諸国の大名にここまでの奉仕をさせる、家康の威光がわかります。
石鳥居は複数の石を組み合わせて作られています。写真の上部に見える切れ込みのような筋がそのつなぎ目の部分です。この構造には地震のショックを緩和する効果があるのだとか。
2.五重塔
鳥居をくぐると、左手に見えるのが写真右にある五重塔。ブッダの遺骨を納める場所として、仏教施設には欠かさず建てられている建築です。
見事な凛とした佇まいで非常に存在感があり、しきりに撮影を行う旅行者の姿が見受けられます。
建築全体だけでなく、1層目の軒下にも注目してみましょう。何やら動物の彫刻があしらわれているのがわかります。
これは十二支の彫刻で、1面につき3体、4面で12体すべての動物が存在します。
五重塔の正面にあしらわれた寅(とら)・ 卯(うさぎ)・ 辰(りゅう)は、家康とその子孫の干支だとされています。
寅:家康の干支
卯:家康の子、秀忠の干支
辰:家康の孫で、東照宮を現在の姿に造営した家光(いえみつ)の干支
彼ら3人の干支は東照宮の至るところに彫刻されています。訪れた際はぜひ探してみましょう。
3.表門
無料で入れる区域はここまで。東照宮ならではの文化財をもっと観賞するには、有料区域にもぜひ行ってみましょう。
東照宮の正面入口にあたる表門(おもてもん)付近で拝観料を支払います。大人・高校生1,300円、小・中学生450円をご用意下さい。
支払い後、日本の寺院では定番の守護神、2体の「仁王像(※1)」の間を通り抜け進みましょう。
※1:仁王像……外的から寺院を守るための守護神。
表門を抜けて左に曲がると見えるのが神厩舎(しんきゅうしゃ)。神の御使いである馬をつないでいたとも、家康所有の馬がここにいたとも言われています。
豪華絢爛な東照宮の建物の中では珍しい、素木のシンプルな建築が特徴です。
神厩舎の梁(はり)の部分には、ユーモラスな猿の彫刻が施されています。日本では猿は馬を守る動物であると考えられていたため、馬の安全を祈願してこの場所に彫刻されたそうです。
特に有名なのが、上の写真の「見ざる・言わざる・聞かざる」の彫刻。日本人を中心に、多くの旅行者が写真に収めようと集まっています。
ちなみにこれらの彫刻は、正面左上からはじまり、人の一生を表現しているとも言われています。
たとえばこちらの場面は、青年時代の「恋」の場面。成長した猿がパートナーを見つけるとともに、2人で人生の荒波を乗り越えようとしています。
ぜひすべての彫刻を見て、そのストーリーをイメージしてみてください。
4.鳥居
神厩舎を過ぎ、突き当りにあるのがこちらの御水舎(おみずや)。奥へ進む前に、ここで手や口を清めましょう。
日本の神社には必ずある御水舎ですが、屋根のある御水舎はここが最初なのだとか。
御水舎の先にある鳥居は、その先にある陽明門(ようめいもん)、唐門(からもん)を一度に写真におさめられるベストスポット。
当時の人々と同じ目線(身長155センチメートル程度)で見るのが、もっとも理想的な眺めだとされています。
5.陽明門
東照宮の中で、おそらくもっとも有名な建築が、この陽明門です。金と白のコントラストが印象的なこの陽明門。なんと金箔24万枚を使用しているとのこと。有名な京都の金閣寺でも金箔の使用は20万枚。東照宮の贅沢さ、豪華さがわかります。
あまりの美しさから、日が暮れるまで眺めても飽きない門「日暮(ひぐらし)の門」とも呼ばれています。
中央の額には家康の神名である「東照大権現」の文字が。この文字は建設当時に在位していた後水尾天皇(ごみずのおてんのう、1596年〜1680年)が記したものです。
陽明門では、細かな装飾・彫刻にも注目してください。人物・動物などの彫刻は、そのほとんどに「平和」の願いが込められています。
竜や麒麟、息(いき)などの瑞獣(ずいじゅう:平和な世にしか現れないとされる、中国の伝説の生き物たち)も、平和を願ってあしらわれたもの。
こちらも「子どもたちが自由に遊べるほどの平和な世」を表しています。
古代中国の政治家・周公の像。髪を洗っているときも民の声に耳を傾けている。
古代中国で平和に世を治めた王や政治家たちの姿にも、平和な世の願いが込められています。
6.唐門
拝殿の直前にある唐門。アーチ状の屋根が特徴です。
屋根の中央上部にいるのは、霊獣の恙(つつが)。獅子や虎よりも強い力を持つ霊獣であり、東照宮の夜を守護していると言われています。
恙の像は屋根に金輪で固定されています。夜の守護の要である彼がどこかへ行ってしまわないようにしているのだとか。
門の前面中央に座っているのは、古代中国の伝説上の皇帝・舜(しゅん)の姿です。
東洋では理想的な君主の代表として知られる舜。彼のように理想的な政治を行おうとする思いと意気込みが感じられます。
ちなみにこの舜の顔ですが、実は家康の顔に似せてつくられているとも言われています。
7.御本社
参拝所、さまざまな儀式を行う場として使われる御本社は、東照宮の中でもっとも重要な施設のひとつ。そのため建物の中は撮影禁止です。
神聖な施設ですので、参拝の際は静かに祈りの時間を過ごしましょう。
8.回廊(眠り猫)
家康が眠る墓所があるのは、御本社の北側にある奥宮。奥宮へは御本社東側の回廊をくぐり、森の中に続く207段の階段を登らなければなりません。
さて、そんな奥宮へ続く道の入り口付近にあるのが、日本で非常に有名な「眠り猫」の彫刻です。
「この先にはネズミ一匹通さない」という願いが込められているとも、「猫が眠り、(裏面に彫られている)雀たちが自由に飛べるほどの平和な世」を表現しているとも言われます。
眠り猫付近は非常に混雑するので、ゆっくりと眺められない場合が多いです。見逃さないよう注意して下さい。
9.奥宮
眠り猫の下をくぐり抜けたら、最後に家康の眠る奥宮へ向かいましょう。
午前中の早い時間帯ならば、人影もまばらで山内の静かな雰囲気を味わえるでしょう。
鳥居が見えて来たら、残りわずか。体力に自身の無い方、年配の方は焦らず休みながら登ってください。
階段を登りきると、手前に拝殿、その奥に家康が眠る墓所があります。拝殿のそばにはベンチや自動販売機があるので、参拝前にここで息を整えるのもよいでしょう。
拝殿の前面は黒漆が塗られています。東照宮内でもっとも高価な漆で、非常に荘厳です。
陽明門や唐門付近の華やかな雰囲気とは一変し、墓所の周りは厳かで神聖な雰囲気。奥宮が一般に公開されたのは1965年ですので、それまでは人々がめったに足を踏み入れることのない聖地でした。
現在でも変わらないその神聖さを全身で感じ、参拝を済ませてからこの場を後にしましょう。
ユニークな動植物や装飾にも注目
参拝ルートの途中には、儀式の際に使用した「鼓楼・鐘楼(※2)」、鉄で作られた「鉄燈籠」、江戸時代にオランダから贈られたという「オランダ灯籠」、天井画の龍が鳴く「鳴龍」などの見どころがあります。
美しくてユニークな動植物たちもたくさん隠れています。日本の神社にはおなじみの狛犬だけでなく、虎や竜などの動物、中には牡丹などの花々も。
東照宮らしい華やかさを持ちつつ、どこかコミカルな印象を受ける彼らの姿は、きっとあなたの東照宮参拝をより愉快なものにしてくれるでしょう。
東照宮を訪れたら、そんな動物探しを楽しんでみるのもいかがでしょうか。
日光東照宮の近くのオススメホテル
東照宮に最寄りの東武日光駅は、東京から新幹線で2時間ほどで行くことができます。そのため、日光は東京から日帰りで楽しむことができます。
しかし、日光には、東照宮のほか、絶景の中禅寺湖、日本三大名瀑のひとつとされる華厳の滝といった見どころのほか、オシャレなカフェなどもたくさんあります。せっかく来たなら、1泊していくのがオススメです。
東照宮の近くに泊まりたい場合、オススメは世界遺産「神橋」から徒歩1分で行ける「日光 季の遊」です。素泊まりですが、日本らしい趣が楽しめる宿で、大浴場もついており、旅の疲れをいやすのにピッタリです。
また、近くのバス停からバスに乗れば、中禅寺湖、華厳の滝などにも簡単にアクセスできます。
「せっかく日光に来たなら、特別な場所に泊まりたい」という方にオススメは、「日光金谷ホテル」です。
1873年創業、現存する日本最古のリゾートホテルといわれており、これまでアルベルト・アインシュタイン、白洲次郎、ヘレン・ケラー、アイゼンハワーなど、歴史の偉人たちも泊ってきました。建物は、2005年に国指定 登録有形文化財に登録されています。
もっとも、「なるべく安い宿に泊まって節約しつつ、たっぷり観光したい」という人もいるでしょう。そんな方には、「Hotel Viva Nikko」が良いかもしれません。東武日光駅から徒歩3分という好立地で、和室でくつろぐことができます。
また、ドミトリー形式で大丈夫という人は、もっと安い宿もあります。そのほかの日光のホテルは、Booking.comからチェックしてください。